豊かな山で育んだ素材を活かした食事 自然に癒やされる優しい宿『やたきや』

風に揺れる白いのれん。やたきやの門からから吹いてくる風は、別世界からのように感じます。細い山道を進んだ先にあるやたきやは、物語の世界に出てくるお宿のような佇まいです。

「懐かしいみらい」をコンセプトに、新品古材を使って再生されたお宿は、新しいけど新しくないから心地いい、不思議な場所でした。300年以上前の民家を、古民家ホテル&レストランへと再生させたやたきやは、大きく3つのエリアに分かれます。

◾️里山

やたきやの門をくぐると、まず驚くのが畑や向こうの山を見渡す見事な景色。この景色をつくるため、田中さんは山だったところを丸2年かけて村の人と友人とで協力して切り拓きました。山道を歩くと気持ちの良い木漏れ日を感じますが、以前は木漏れ日もないほど木が鬱蒼と茂っていたそうです。

地面にはチップが敷き詰められており、歩くと柔らかい感触が足裏から伝わってきます。伐採した杉や檜を有効利用しているのだとか。歩くだけで森林浴ができて、澄んだ空気が気持ちがいいです。

少し登っていくと、母屋の美しい姿を別の角度から見ることができます。さらに進むと東小屋があり、ここは150年前の木の小屋を東小屋にしました。時折マルシェをここで開催し、訪れた人がビールやコーヒーを飲んだり、カレーを食べたりと寛ぐ場所になっています。自然豊かな場所だけあり、ここでヘビの抜け殻やせみの抜け殻を見つけることもあるそうです。

夜には満点の星空が広がり、朝にはむこうの山からもやがたなびいて幻想的な景色になります。宇陀市で昔からいわれる「かぎろひ」です。朝晩、周りの山々と空とが織りなす様はぜひ眺めてほしい景色です。

「ここは電波も入らないので、デジタルデトックスにもなりますよ」と語るのは代表理事の田中太見夫さん。

◾️無農薬農園

宇陀市の特産である大和当帰をはじめ、薬草や野菜を約40種、無農薬で育てています。ここで育てた野菜は、シェフが腕をふるい、創作イタリアンへと姿を変えます。薬草の地、宇陀だけあり、一般には雑草と思われがちなどくだみなども、効能のある植物として料理に取り入れています。やたきやでは、7割の食材を地元宇陀で調達し、残り3割ほどは他県の珍しい食材などを使用しているそう。定番食材はもちろん、意外な食材の料理との組み合わせ、レベルの高い料理に驚くお客様も多いそうです。

◾️古民家ホテル

宿に入る前、豊かな里山を眺められる玄関口は思わず立ち止まってまず景色を眺めてしまいます。伝統的な大和棟(やまとむね)でできた母屋は、茅葺の切妻屋根が特徴。約300年前の建物を再生させました。「江戸後期に流行った形ですが、そのなかでも割と変わっているデザインだと思います」と田中さん。ここまで大きな大和棟は珍しいのだとか。茅葺き屋根のはきかえは、奈良県南大和の村の職人たちに依頼。なるべく土地のものを使い、土地の人間の手で行うのが田中さんの信条です。

宿に入ると、入ってすぐに受付があり、靴を脱いで上がると、食事をする畳敷きのフロアがあります。畳は本琉球畳といい、昔は安価でしたが今では材料も手に入りにくく編める畳屋さんも減っていて一番高級な畳です。また、ふつうの家は部屋が4つのところ、元商家の家なので部屋が6つありとても広く、昼は2組、夜は3組限定で、ゆったりと食事ができる空間となっています。

受付は元は馬小屋だった場所で、その後ろは台所だったそう。現在玄関になっている場所は、昔芋の貯蔵をする芋穴があり、天井はありませんでした。そして上にはハシゴで昇り降りをしていた芝や蚕などを置いていました。縁側には、今では珍しい防風の手延べガラス。「ここで肩肘張らずスイカを食べてのんびりするイメージです」と田中さん。

奥の宿泊スペース「真秀」へ移動すると、静謐な空気にほっと呼吸がゆるむよう。泊まれるのは1組で、樹齢200年の木や秋になると真っ赤に染まる紅葉の木があるプライベートガーデンを楽しめます。庭に並べられたのべ石は、宇陀が地元の友人の土建屋さん3件に頼んで、古いのだけをもらってきて並べたもの。どれも100年から200年前ののべ石だそうです。

お風呂は信楽焼の特注品。ここからは月と大和棟が見えるように場所を考えて作りました。「元は納屋だった場所ですが、ここにお風呂を作ったら最高だなと思ったんですよ」(田中さん)。1泊では味わい尽くせない贅沢な空間で、外出せずにずっとここで過ごしたい、そんな空間でした。

150年ほど前の蔵を改造した客室もあります。客室はそれぞれ「陽炎(かぎろひ)」「古楽」「万葉」の3部屋。万葉はペットと泊まることもできます。壁や梁などは当時のものをそのまま残し、蔵だった雰囲気を崩さないよう心がけて作りました。もみを入れた当時の土壁や分厚い扉などもそのままに、水まわりなどは改装され現代と過去が絶妙に合わさった空間です。古民家跡から譲ってもらった戸なども活用し、古き良き日本独特の蔵の雰囲気を感じる空間は、海外の人にも人気です。

どの部屋も、もと畳職人の田中さんならではのこだわった畳を敷いていて足裏の感触が柔らかく気持ちが良いのも特徴的です。

宿では大和当帰を入れた薬湯風呂に浸かることができ、オリジナルの入浴剤で、芯から体を温め癒やされるでしょう。やたきやの門をくぐれば、街よりも時間がゆっくり流れているようで、心がじっくり整っていく感覚があります。やたきやで体も心もリセットし、整え直してみませんか。

【お知らせ】
2026年5月31日(日)に、「うだ薬湯の宿 やたきや」4周年記念マルシェを開催予定。
焼き菓子やスープ、自家焙煎珈琲、オーガニック商品など、さまざまな出店者が集まります。

詳細はInstagramをご確認ください。
https://www.instagram.com/yatakiya/

やたきやHP:https://yatakiya.jp/

 

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